2008年7月30日水曜日

思い出が芋づる式に湧き出てきて…

なにかのきっかけでとある曲を思い出すと、それにつられて記憶が蘇ってくること、ありますよね。
ここのところ、にきあの脳内ヘビーローテションは、フランスを代表するロックバンド(だった…いや今も、かな) Noir Desir の「Le vent nous portera」。

海馬から零れ落ちた記憶の風景は、日本でもおなじみ夢想家の郵便配達夫シュヴァルが拾ってきた石だけで作り上げた「シュヴァルの理想宮」を観るために、フランス南西部ローヌ・アルプ地方の小さな村オートリーヴを訪れたときのこと。

6月の終わり、空気は乾いているけど日差しが強烈に痛い午後。
理想宮に到着して、最初のほうは感激しつつ写真を撮りまくり満喫しまくりだったんですが、細部をじっくり観て、内部に入って狭い通路を抜け理想宮内を迷路のように巡るうちに、この宮殿作りに心血を注いだシュヴァルの、情熱を通り越した狂気の力に脳内を侵食されたようになってしまいました。

頭はくらくら、でも目玉は好奇心いっぱいにあちこちへと手足を動かします。

2時間ほど堪能したあとは、さらにそこから歩いて30分の場所にある、彼のお墓にも立ち寄ろうと、誰もいない道をとことこひとり。
太陽に照らされて白くなった土、燃えるような深緑の糸杉、黄金色の畑。まるでゴッホの絵の一部になってしまったような感覚にまたしても頭くらくら…。
理想宮にはあんなに観光客がいたのに(日本語のパンフレットもあるほど!)、こんな村はずれまでは誰も来ないんだな…。
そしてシュヴァルのお墓もやっぱり、情熱という名の狂気を感じさせるものでした。


すでににきあはもう、打ちのめされたボクサーのようにヘロヘロのノックアウト状態。

しかも、帰りの最終バスに乗り遅れてさらにヘロヘロ…(涙目)。
理想宮の近くにある小さなカフェでタクシーを呼んでもらい、冷たいディアボロ・マントで何とか息を吹き返して。
タクシーの中ではただもうぼんやりと、オレンジ色になり始めた空を見ていました。
そのときにラジオから流れてきた曲が「Le vent nous portera」でした。

ああ、これ知ってる。「風が僕らを連れ去ってくれる…」
タクシーの運転手さんも曲にあわせて小さく口ずさんだりして。
ボーカリストの、フランス中を驚愕させた殺人事件はまだ記憶に新しいところだけど、そんな悲劇があってなお、こうして広く人々に聴き継がれる名曲なんだなぁ。

サウダージなメロディが風景と心にすっと染みこんできて、忘れられない曲となりました。

…ってな具合に最近よく、ワーホリ滞在中の楽しかったことや辛かったことが、ころころと海馬から零れ出てきます。
思い出に浸ってしまうのは、現状が停滞しているからかな…よくないなぁ。
こんなときは、寺山修二の言葉を!

<ふりむくな ふりむくな うしろには 夢がない>

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